相撲の仕組み
「廻し」は力士の戦闘服。「褌(みつ)」とも言います。褌は「ふんどし」とも読むので、見たまんまですね。廻しは「稽古廻し」「締込(しめこみ)」「化粧廻し」の3種類。稽古の時につける「稽古廻し」は木綿製。
雲斎木綿(うんざいもめん)という固い木綿でできていて、十両以上は白のまま、幕下以下は黒か紺に染めたものと決まっているので、関取かそうでないかは稽古中でも一目瞭然です。幕下以下は本場所の取組でも同じ稽古廻しを使います。天日干しだけで洗濯もしないみたいなので、本当に血と汗と涙が染料と一緒にしみ込んでいるんですね。
ちなみに一度関取になっても、幕下に落ちればまた廻しは黒に戻っちゃいます。
十両以上の関取になると、取組には絹でできた博多織の廻し「締込」をつけます。色は紺か紫系統という原則はあるものの、たいていは力士の好みの色で、水色ピンクやなど、アイドルのイメージカラー並みにバリエーション豊かです。
本当は規定違反ですが興行ですので相撲協会もそこは何も言いません。締込は繻子織(しゅすおり)と呼ばれる密度の高い織り方で、テカテカと光沢があるのが特徴です。一枚100万円以上するそうですが、職人さんが手織りしている絹織物と聞けば納得ですね。
化粧廻しはロゴやら刺繍やらが入ったまえかけが付いた廻しです。化粧廻しを締めるのは土俵入りの時だけで、しかも十両以上の関取しか締められません。裾についているフリンジは「馬簾(ばれん)」と言います。
化粧廻しはどんなにカラフルで派手な色でも大丈夫ですが、馬簾に紫色を使えるのは大関以上と決まっています。
紫は神事では高貴な色なんです。化粧廻しの中でも、特に横綱の化粧廻しは太刀持ちや露払いとセットで「三つ揃え」になっています。よく見ると太刀持ちや露払いの力士は幕内土俵入りのときも三つ揃えの化粧廻しをつけていますよ。
廻しの長さは力士の腹回りによっても違いますが10m弱・幅は80㎝程。締込は4つ折り~6つ折りにして6重に締めます。取組中、相手の指が廻しに入りにくくするために水で湿らせて固くしながら巻いていきます。ちなみに「ゆるふん」と言って、わざと緩く巻いて廻しを取られても惹きつけにくくするちょっとセコい巻き方をしている力士も結構います。
稽古廻しは4つ折り、5重巻が基本。関取は稽古廻しをつけるときに前だれ(端っこの部分)を出しておへそのあたりにくるっと巻き込みます。素人にはよくわからないけれど関取はこれが粋なのだそう。
化粧廻しは西陣織や博多織で精巧な刺繍が施され、なんとお値段は安くても200万円以上。基本的に贈答品で、母校¥や企業、後援会が製作して力士にプレゼントします。力士の顔見世だけでなく後援者の広告の意味も持つだけあって、出身校やスポンサーの名前がデカデカとデザインされているものが多いです。デザインに規定はないので、校章や名所・名産品から、企業名、アニメのキャラと様々。
昔は宝石を縫いこんじゃったゴージャスなものや、電飾つきの化粧廻しもあったとか。最近では奥さんの伝手で立体化粧廻しなるものを嘉風がつけたり、引退した稀勢の里は北斗三兄弟の三つ揃えの化粧廻しを作ったりとなかなか話題に事欠きません。
昔は下半身を隠すため、関取は化粧廻しで相撲を取っていたのだとか。前垂れ部分が邪魔になったから締込にして前垂れ代わりにさがりをつけるようになったそうです。あんな激しい取組に前垂れが邪魔なのはすぐわかりますよね。さがりが出来たばかりの頃は廻しに固定されていたようですが、要は紐なので、指に絡まってケガをする力士が多数出たことから、すぐ取れるものに変わったのだとか。
関取の下がりは締込と同じ素材・色です。ふのりで紐をパリッと固めて棒状にし、先っちょだけ平たくしています。取組中に折れることもありますが、水で湿らせれば元に戻るので大丈夫。幕下以下の下がりは正に紐です。木綿でできているうえにのりで固めていないのでのれんのよう。この下がりだけは幕下も唯一カラーが自由らしく、ピンクや緑、赤などバラエティに富んでいます。
下がりの本数はゲン担ぎのため奇数と決まっていて、体型によって増減させますが現在は19本が多数派を占めます。
前褌(まえみつ)…お腹側の部分。股間を収納するので前袋ともいいます。
横褌(よこみつ)…横っ腹の部分。
後褌(うしろみつ)…背中側の部分。
前立褌(まえたてみつ)…股間の部分。この部分を取ると反則負け。横から指を入れるなんてもってのほかです。
後立褌(うしろたてみつ)…お尻の部分。ここを取っても反則負けにはなりませんが、すぐ離すのがルール。
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