相撲の仕組み
力士の稽古は午前中メインです。稽古場に入るのは番付が下の順からというのが決まりですが、稽古の始め方は皆同様です。まずは各自股割りやストレッチで体をほぐし、その後「四股」「てっぽう」「すり足」で足腰を鍛えます。土俵に入ったら「三番稽古」「申し合い」「ぶつかり稽古」で実践トレーニング。同時に精神も鍛えます。
関取がいない場合は親方が胸を出すこともあります。関取になると部屋に実力に見合う稽古相手がいなければ別の部屋に出稽古に行くことも。食事をとらずにこれらをこなさなければなりませんから、稽古が終わるころには汗びっしょりでへとへとになるのも納得です。
関取衆は土俵に入る前に若い衆を1人指名して何番か「あんま」をします。地位が上の力士が下の力士に胸を貸すことを「あんま」というのですが、若い衆は関取の胸を借りれる良い稽古になるし、関取にとってはウォーミングアップになり、お互いに利があるわけです。 朝に稽古をするのは場所中でも巡業中でも同じです。昔は巡業中に外に即席の土俵を描いて稽古する「山稽古」も行われていたりしましたが、今では使用規約が厳しくなったので本気の山稽古をする力士を見る機会はほとんどありません。
四股は本来地中の邪気を払う意味を持ちますが、相撲で下半身強化をする上で最も大切な動作です。
強い力士ほどたくさん四股を踏んでいると言われ、横綱白鵬などは四股踏みにかなり時間をかけるそうです。足腰を鍛えられるので最近では「四股踏みダイエット」なるものも登場するくらい。手をついた膝を90度曲げて足を開き、上げる足をピンと伸ばして踏み下ろす、これを片足ずつ繰り返します。バランスを保ちながら軸足も曲げ伸ばしするのが肝心で、やってみるとわかりますが何回かやっただけでも結構キツイです。
これも下半身を鍛える代表的な稽古の一つ。土俵の周りを足の裏を地面に着けたまま周ります。この時足は肩幅より少し広くして膝を90度にまげ、やや前傾姿勢の空気椅子状態。脇は締めて足と同じ側の手を出しながら背筋を伸ばし、胸を張って進みます。基本はゆっくり行いますが、スピードをつけてすり足をすることもあります。
突き押しの基本的な動作を身に着けるための稽古がてっぽうです。相撲部屋の隅っこには必ず「てっぽう柱」というてっぽう専用の柱が設置してあります。脇を締めて手でてっぽう柱を突きますが、この時腰を入れて同じ足をすり足で前に出し、左右繰り返します。ちなみに、場所中ウォーミングアップでてっぽうをして会場を壊してしまわないように、本場所の会場の壁や桝席下の鉄骨に「テッポウ厳禁」という張り紙が貼ってあったりします。
勝ち抜き戦のような稽古を申し合いと言います。ただの勝ち抜き戦ではないところは、勝った相手が次の相手を指名するところ。相手を指名することを「買う」というのですが、買ってもらうために手を挙げたり声を出してアピールしたりします。アピールしない力士は壁に貼りついているという意味で「かまぼこ」と呼ばれて馬鹿にされます。稽古総見の申し合いなどでは、横綱に買ってもらおうとまだ土俵を割る前から俵に足をかけて待ち構えている関取たちの姿がちょっとシュールに見えたりもします。
主に実力の近い力士同士がする稽古です。「三番」と言っても実際は当人同士が納得いくまで勝ち負けに関係なく何十番でも行われます。出稽古などで親交の深い力士同士でしたり、特定の相手への対策をしたいときにする稽古です。
稽古の総仕上げで行うぶつかり稽古は土俵際での詰めを鍛える一番キツイ稽古です。土俵中央で構えている相手が土俵を割るまでもろハズ押し(両手で脇を押す)するのですが、受け側は土俵に足がかかったところで押し返すので最後まできっちり押さないと相手に突き落とされ、転がされてしまいます。同時に受け身も身につけます。受け側は通常格上の力士が務めますが、場合によっては親方が足袋を履いて胸を出すこともあります。足袋を履くと押すのに力が要るのでよりキツくなります。
「土俵の周りで他の力士の稽古を見て分析するのもまた稽古」という意味で見取稽古という言われ方をします。
土俵には2人しか上がれませんから、見て盗むのも稽古の一つなのです。もちろん、ただずっと見ているというワケではなく、土俵外ではてっぽうをしたり石を持ってすり足をしたり、腕立て伏せなど筋トレをしたりもしています。
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