相撲観戦に行こう
相撲の取り方のことを「取り口」といいます。体格・入門するまでの経歴・所属する部屋などによっても取り口は色々ですが、大きくは「突き押し相撲」と「四つ相撲」の2つ。どちらのタイプかは相撲を見ればだいたいわかりますが、それぞれどんな相撲か、どの力士がどちらのタイプか知っておくと相撲の観戦がもっと楽しくなりますよ。
読んで字の如く、廻しは使わずに相手に「突っ張り」や「押し」で圧力をかけて立ち合いから相手に廻しを許さず攻め立てるのが突き押し相撲です。下から上へ突っ張れば相手の上体を起こすことができますし、相手が差してくるときはハズをあてがったり、おっつけをしたりして廻しを取らせないようにしながら押します(おっつけとハズについては次で説明します)。
押し相撲の力士同士のけんかのような突っ張り合いはとにかく激しい!突っ張りつつも、いなしや引きで駆け引きをしているのも見逃せません。手足が長い力士はリーチが長く懐が深いので押し相撲タイプが多いです。碧山などは腕が太くて一発の威力がすごいです。押し相撲は身長の高い力士が有利と思われがちですが、小兵でも低いところからぐいぐい突き上げ、技を使って大きな力士を力強く押して倒します。貴景勝がその典型的な例で、小さくても強靭な足腰と休みない激しい突きを武器に幕内最高優勝を成し遂げました。
手の親指以外の4本をピッタリつけて親指を開きL字型にすればハズの形です。弓矢の後ろの形が由来です。「ハズをあてがう」というのは、ハズを相手の脇の下らへんに押し付けること。
相手の腕の肘から上を下からギュッと押し上げるように突っ張るのがおっつけです。差そうと手を伸ばしてきた相手の動きを封じると同時に押せる攻守を兼ね備えた技です。
四つ相撲とは、簡単にいうと組んで廻しを利用してとる相撲のことです。四つ相撲ではしばしば「下手は深く、上手は浅く」とよく言われます。「深く」というのは背中側のことで、下手の時は廻しの結び目に近ければ近いほど相手の腕が上がって力を出しにくくなります。逆に「浅く」というのはお腹側のことで、前褌よりのところで上手をとれば相手をひきつけて自分の力を出しやすくなります。また、「廻しは小指から取れ」という相撲の格言にもあるように、小指をしっかりと廻しに入れれば力が出る上に廻しを切られにくくなります。小指を突き指するのは相撲が上手い証拠なのだとか。柔道などでも柔道着を掴むときは小指に力を入れるみたいなので、細くても一番力が入る指なのでしょう。
四つ相撲は組み方で呼び方変わり、力士によって得意の四つの形が違います。立ち合いの際には、どうやって自分の得意な四つの形に持っていくか、相手の得意な四つの形をいかに封じるかの攻防も要チェックです。
右手を相手の左脇に差して左手が上手なら「右四つ」、反対に左手を相手の右脇に差して右手が上手なら「左四つ」といいます。
両手を下手にして廻しをとっていることを「もろ差し」または「二本差し」と言います。反対に、両廻しとも相手に下手をとられ、自分が両方上手で廻しをとっていれば「外四つ」。もろ差しは相手の懐に入っている状態なので有利なことが多いですが、体格差があって自分の方が圧倒的に小さかったり、差した両腕を極められたりすると劣勢になることも。
相四つの反対で、右四つが得意な力士と左四つが得意な力士が対戦すれば「けんか四つ」です。四つに組むまでにお互い同じ側の手を差そうとする「差し手争い」に勝てばほぼほぼ勝負は決まったようなものですが、差し手争いをダシにしてそこ以外で他の技を繰り出す力士も多く、その駆け引きもまた見ごたえがありますよ。
同じ四つの形を得意とする力士同士が対戦するときは「相四つ」といいます。右四つが得意同士なら「右の相四つ」という使い方をします。実力が近い相四つの対戦では組んだままなかなか決着がつかないことも多いです。
お互いが廻しを取って四つに組み、密着したまま動きがストップしているのを「がっぷり四つ」と言います。がっぷり四つは一見じっとしていますが実際は相手の呼吸で出方を伺っていたり、巻き替えや投げをうつなど次の一手を繰り出すタイミングを計っていたりと、目に見えない攻防が繰り広げられています。
これは廻しではなく、両者が頭をつけて手先を絡めながらレスリングさながらに組みます。実際頭四つになるのは筋肉質な小兵同士の対戦が殆どで、宇良や石浦、北播磨などガッチリ体型の小兵力士はよくやっています。
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