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仕切り~立ち合い

張りつめた静寂の仕切りから立ち合いで力士がぶつかり合う音は、相撲でしか味わえない醍醐味!相撲は「立ち合いが全て」と言う人もいるぐらい、勝負の行方を左右する重要なポイントが立ち合いです。立ち合いでは仕切り線より後ろで構えて互いの呼吸を合わせ、両者が手をついた時点で行司が軍配を引きます。

つまり、行司がスタートを切るのではなく、力士同士が呼吸を合わせて取組をスタートさせ、それに合わせて行司が「はっけよい!」と言うのです。呼吸を合わせながらも相手の目線や動きを見ながら駆け引きして自分の立ち合いをどうするかも考えなければならず、制限時間が迫るごとに見ている側にも緊張感がビシビシ伝わります。わずかでも立ち遅れようものならもうその時点で勝負が決まると言っても過言ではないのです。

 

立ち合い不成立

最近の流れでは、必ず両者が両手をつかなければ「立ち合い不成立」でやり直しになる事もよくあります。行司や審判委員が「まだまだ!」と言ってやり直しになったり、立ち合い不成立だと思っていたら実は成立していて、立ち合いに遅れてしまったりする力士もいるなど、まだ完全には習慣化されていません。

 

仕切り直し

行司は力士同士の呼吸を合わせるお手伝いをしています。もし呼吸が合わなければ「待った」をかけて仕切り直しです。もちろん力士にも「待った」をする権利はあります。昔は制限時間を超えた時点で「待った」をかけると罰金とられちゃったそうです。

 

立ち合いの手の位置と腰の低さ

力士によって立ち合いの仕方は十人十色。同じ力士でも立ち合いを色々変えて相手と駆け引きをします。仕切る手の位置が右寄りだと右上手狙いとか、思い切りぶちかましたいときは少し下がるとか、かと思えば変化してよけたり、小さい力士はサッと懐に入るために仕切り線の近くで腰を低くするなどなど…。腰の高さ・手を置く位置・すねの角度などを見ていれば、力士がどういう立ち合いで相手を揺さぶりたいのかがだんだん分かってきますよ。

 

立ち合いの時の心理・読み

相手の得意な相撲やよくやる立ち合いを研究して対戦に臨む力士も多いです。過去のデータやその時の目線からどのような立ち合いをするか仕切りの最中から立ち合いギリギリまで相手の心理を予測し、自分の心理もまた悟られないように駆け引きします。

取組で先手を取って自分優位に勝負するためには、どう立ち合うかがとても大事。力士のバックグラウンドや体格によって相撲のタイプが変わってくるので、したい相撲のパターンによっても好みの立ち合いの仕方が違ってきます。

例えば腰を低く落として相手に頭から全体重をかけてぶつかり、当たり勝ちすれば相手の上体が起きて懐に入りやすい上に相手は腰が高くなるので力を入れにくくなり、優位に勝負を運ぶことが出来ます。四つ相撲が得意な力士などは脇を締めて胸から当たり、瞬時に差します。 立ち合いの時に繰り出される技をいくつか紹介しておきましょう。

 

張り差し

平手で相手の頬を叩き相手がひるんだ隙に廻しをとります。隙をついて懐に入ればもろ差しも狙えます。たかがビンタでひるむのかと思いますが、力士の手は大きく厚く力も強いので平気そうに見えますが相当痛いはずです。

 

かち上げ

脇を固め、相手の胸から顎らへんにエルボーを食らわす攻撃です。相手の上体を起こすことが出来ます。横綱白鵬なんかは張り差しからのかち上げがお決まりのパターン。

 

もろ手突き

突き押し相撲が得意な力士に多い立ち合いの技です。もろ手の「もろ手」は「両手」と書き、文字通り両手で相手の上半身を突き押して相手の動きを止めます。当たれば効果は抜群ですが、変化されると勢い余ってそのまま押し出されることもしばしば。阿炎(あび)関が得意とする立ち合い。

 

ぶちかまし

頭を下げて相手の胸から上に頭突きを入れるのがぶちかましです。体勢が低すぎるとはたかれることもありますが、両者共にぶちかましで立ち合うと脳震盪や流血なんてこともよくあります。

 

変化

立ち合いの時に体の軸をずらすのが「変化」で、注文(作戦のこと)ありきなので別名「注文相撲」ともいいます。
向かってくる相手の意表をついてヒラリとかわしてそのまま押し出したり、少しずれて当たれば上手を取りやすくなったりします。

変化をしようとしている力士は仕切りの時にその方向に視線が行くこともあるそうですよ。真っ向勝負を期待しているファンが多いので、変化で勝っても盛り上がらないことも多いし、変化した力士を叱る親方も。特に横綱は自分より地位が低い力士たちに「胸を貸す」立場なので、変化なんてしようものならブーイングの嵐です。

 

猫だまし

格下力士が格上相手にすることがある奇襲の一つです。立ち合いの瞬間に相手の顔の前でパチンと手をたたいてびっくりさせるというなんか子供みたいな手です。名前が「猫だまし」というのも納得ですが、技になるくらいですから緊張した場面で急にされるとひるんでしまうのかもしれませんね。

 

のど輪

4本の指をピッタリくっつけ、親指を開いた手を「筈(はず)」と言います。はずの状態で相手ののどのあたりを押すのがのど輪で、相手の上体を起こしながら押し込むことが出来ます。立ち合い以外でものど輪で攻めている場面はよく見かけます。

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