相撲の仕組み
行司は勝敗の判定役ですが、取組中に唯一衣装を着て土俵にアクセントをつける人でもあります。しかし行司もランク制なので、軍配の房の色・履物・装束の素材や着こなし方も格が上がるにつれて高級になり、持ち物も変わってきます。土俵草履を履けるのは三役格以上で、立行司は短刀を帯刀して土俵に上がります。
もちろんお給料も全然違います。月給1万4000円の序の口格からスタートして、最上ランクの立行司まで上り詰めれば月50万円と大きく開きがあります。「直垂(ひたたれ)」と呼ばれる行司の装束やかぶっている烏帽子(えぼし)、その他小物類はお値段も張るので、月給とは別に衣装代が協会から出ます。
格が上の行司ほど上等なものを着ていますから、もちろんこれも階級別に値段が違います。デザインは自由らしいですが、後援者や部屋の関取がプレゼントしてくれることもあるそうで、よく見ると部屋の名前や力士の名前が柄になっていることもあります。
また、力士同様、行司も見た目で階級がすぐにわかっちゃいます。通称「はだし行司」と呼ばれる幕下以下の行司は直垂の裾をたくし上げ、膝下まる見せで土俵にあがります。十両以上になると白足袋をはき、裾も下ろします。
立行司になると神事では位が高い人しかまとえない紫色を装束や小物に使いますが、同じ立行司でも木村庄之助と式守伊之助では、格が上の木村庄之助の方が高貴な紫色の比率が高いのも特徴です。
立行司は結びの一番しか行司をしません。ただし、木村庄之助がいるときは式守伊之助は2番裁きます。優勝決定戦の時は変則的になりますが、立行司が交互に裁く傾向にあるようです。
木村庄之助
房・菊綴(きくとじ)…総紫、紫白 履物…白足袋・草履 装束…夏用は麻・冬用は絹、左腰に短刀、右腰に印籠 |
式守伊之助
房・菊綴…紫白 履物…白足袋・草履 装束…夏用は麻・冬用は絹、左腰に短刀、右腰に印籠 |
三役格行司
三役以上の取組を2番ずつ裁きます。 房・菊綴…朱 履物…白足袋・草履 装束…夏用は麻・冬用は絹、右腰に印籠 |
三役格行司
三役以上の取組を2番ずつ裁きます。 房・菊綴…朱 履物…白足袋・草履 装束…夏用は麻・冬用は絹、右腰に印籠 |
十両格行司
十両の取組を2番ずつ裁きます。 房・菊綴…青白 履物…白足袋(土俵に上がる時に脱ぐ) 装束…夏用は麻・冬用は絹 |
幕下以下
幕下格は4番ずつ、それより下の格は10番以上裁くこともあります。 房・菊綴…黒か青 履物…裸足 装束…木綿地 |
たまご形 |
ひょうたん形 |
行司が持つ軍配には、「たまご型」と「ひょうたん型」の二種類があるのですが、最近はたまご型ばかりです。
輪島塗で漆を塗ってある軍配には、文字が書いてあります。何の文字を入れても良いみたいですが、勝負を判定する身分である行事としての意思を表明するような意識高めの意味の四字熟語ばかりです。マイ軍配を使う行司もいれば、先輩行司から譲り受ける場合もあり、立行司などは代々受け継がれた軍配を「譲り団扇」するそうです。
また、部屋によって式守姓か木村姓のどちらかを名乗っていますが、家名によって力士を呼び上げるときの軍配の握り方が異なります。木村家は手のひらを下に向ける「陰」の持ち方、対する式守家は手のひらを上に向ける「陽」の持ち方をするのが普通ですが、実は慣例的にやっているだけで本当は家名関係なくどちらでもいいという話です。
「差し違えたら腹を切る」という覚悟を持って結びの行司をしているという意味で持っています。短刀は立行司しか帯刀しません。
ちなみに軍配を差し違えると協会に「進退伺」という始末書みたいなものを出します。あまりに差し違えが多いと出場停止や減給の処分があり、降格させられてしまうことも。
直 垂 |
烏帽子 |
印 籠 |
草 履 |
足 袋 |
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