相撲の仕組み
偶然お相撲さんとすれ違って、「意外といい匂いだな」と思ったことがある方もいるかもしれません。その香りの正体は「鬢(びん)つけ油」という伝統的な整髪料(実は国技館の売店でも通販でも買えます)
これを使って力士のシンボルマークでもある髷を整える職業、それが床山です。床山も行司や呼出のように相撲協会の協会員で
協会からお給料が出ますが各相撲部屋で力士と寝食を共にするのが普通です。
全ての部屋に床山がいるわけではなく、床山がいない部屋は一門の他の部屋から床山を借りてきて髷を結ってもらいます。床山の名前の一番上には必ず「床」の字が付き、「床○」のように漢字一字か二字をつけて呼ばれます。
床山が結う髪型は「ちょん髷」と「大銀杏」の2種類しかありません。しかし、髷結いの技術はとても難しく、ちょん髷ですらちゃんと結えるまで3年、大銀杏になると10年以上は当たりまえと言われています。
髷結いの時には鏡もありませんし、基本的には見よう見まねで技術を習得しなければなりませんが、若手の床山がベテランから髷の結い方を実演で学ぶ床山研修会が10年ほど前から始まり、本場所と巡業のない2月と6月に行われています。力士によって髪質や髪の量、また素人にはわからないような細かい好みが違ううえ、季節や体調によっても櫛の通りが変わるらしく、ベテラン床山でも相当な技術が要ります。
関取ともなると自分の髪質やセンスを理解してくれている床山との信頼関係も厚いようですよ。
条件は義務教育を修了した19歳までの男子。理容師免許も美容師免許もいらないのです。
床山になりたければ相撲部屋に入門し、親方を通じて協会に推薦されて理事会に承認されればOK。定員は50名と決まっていますが、力士が12名以上で床山がいない部屋があれば定員を超えていても床山を採用していいことになっています。
床山は勤続年数と技術で6階級に分けられます。技術と言っても、年数を重ねれば重ねるほど腕は上がっていきますから、ほぼ勤続年数でランクが決まります。入門から3年は見習い期間。この期間でもわずかですがお給料が出ます。
各ランクに定員はなく、大銀杏を結えるようになると階級に関係なく幕下以上の力士の髷結いが出来ますが、ランクによってお給料が変わってきます。
2008年からは一等床山まで番付に名前が載るようになり、床山の励みにもなっています。
特等床山…勤続45年以上・60歳以上で特に成績優秀な者。
一等床山…勤続30年以上の成績優秀者、又は勤続20年以上30年未満で特に成績優秀な者。
二等床山…勤続20年以上の成績優秀者、又は勤続10年以上20年未満で特に成績優秀な者。
三等床山…勤続10年以上の成績優秀者、又は勤続5年以上10年未満で特に成績優秀な者。
四等床山…勤続5年以上の成績優秀者。
五等床山…勤続5年未満の者。
力士の通常のヘアスタイルがちょん髷です。関取の大銀杏も取組が終わると床山がちょん髷に結い直します。
幕下以下は取組の時もちょん髷です。元結と呼ばれる紐で縛った髪を頭の上にチョンと乗せているだけです(「だけ」と言っても難しいんですよ!)。先端をちょっと右に曲げるのは粋な心の表れ。
関取になると公式の場で結うのが大銀杏。髷の先っちょが銀杏の葉に似ているのでこう呼ばれます。幕下以下の力士でも、弓取り式や初っ切りなどの時には大銀杏です。大銀杏を綺麗に結うために、髪の量が多い力士などは頭頂部を丸く剃る「中剃り」をします。
梳き櫛 握りばさみ すき油
床山の道具箱の中には髷を結うための道具が色々入っています。つげの櫛は配給されるものを使うそう。
道具は個人でカスタマイズもしているみたいですよ。
水付け…鬢づけ油と髪をなじませるための水を入れる。
すき油…通称鬢づけ油。髪につけるワックスみたいなもんです。ワックスより断然強力でシャンプー1本使っても落ちないとか。
握り鋏…元結を切る鋏
髷棒…大銀杏を結う時に左右のバランスを整えるために使う棒。床山が手作りする
すき櫛…髪についたホコリやフケを取る櫛。汚れを吸着させるために髪の毛をわざとつけてある。
揃い櫛…髷を結った最後に形を整えるために使う櫛。
前掻き…大銀杏を結う時に使う櫛。
荒櫛…最初に髪をとかす櫛。
元結…髪を縛る紙の紐。ゴムじゃないので歯で噛んで強く引っ張ります。
先縛り…大銀杏を結うとき、髷を折り曲げるのに一時的に使う紐。
特等床山…床淀(伊勢ヶ濱部屋)
一等床山…床鶴(陸奥部屋)、床弓(高砂部屋)、床平(二所ノ関部屋)、床朝(山響部屋)、床中(錦戸部屋)、床辰(立浪部屋)
床好(時津風部屋)、床貴(阿武松部屋)、床岳(九重部屋)、床仁(中川部屋)、床幸(友綱部屋)、床門(芝田山部屋)
床大(陸奥部屋)、床誠(浅香山部屋)、床豪(尾車部屋)、床哲(高田川部屋)、床島(二所ノ関部屋)、床勝(千賀ノ浦部屋)
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