相撲の仕組み

呼 出

たっつけ袴で土俵上に上がり、良く通る声で朗々と四股名を呼び上げるのが呼出です。呼び上げの他に太鼓打ちや拍子木打ちなどでも何気に目立っていますよね。髪型も自由ですし、いい声でイケメンだったりするとファンがつくこともあります。しかし、地味な仕事も多いのが呼出。場所前や巡業の土俵づくりから力士の座布団運びまで、土俵周りの雑用は全て呼出の仕事です。たっつけ袴なのは、色々仕事をするのに動きやすいからという理由なんですね。昔は呼び上げ役・太鼓役・土俵役など役割が分かれていたようですが、今は皆何でもやります。力士が土俵で心置きなく相撲をとれるのは呼出のおかげと言っても言い過ぎではありません。

 

呼出になるには

呼出も行司などと同じく相撲協会の協会員です。呼出になるためには、相撲協会の呼出会の審査に合格しなければなりませんが、行司や力士同様相撲部屋に入門し、親方を通じて申し込むのが普通です。応募条件も行司と同じで、「義務教育を卒業した19歳までの男子」となっています。相撲協会に所属できる呼出の定員も行司と同じく45名。空きがなければ待つことになります。合格して協会員になっても駆け出し3年は養成期間。下の階級の呼出の地位も与えられることもありますが、基本的には先輩呼出の指導の下、呼出としての仕事をたたきこまれます。停年は65歳で序ノ口からお給料もちゃんと出ますが、序ノ口呼出の時点で辞めてしまう人も多いので厳しい世界なのは想像に難くないです。

 

呼出の階級

呼出にも力士や行司のように階級があります。行司や力士と違うところは、名跡がないところ。名字もなくて、下の名前で呼ばれます。本名ではない名前の人は入門時に親方や先輩呼出にニックネームのような感じでつけられる場合もあるのだとか。一番上の位は「立呼出」と言い、結びの呼び上げをします。その下に副立呼出2名以下・三役呼出4名以下・幕内呼出8名以下・十両呼出12名以下と続き、ここまでは番付にも名前が載っています。更にその下に幕下呼出~序ノ口呼出がおり、ランクは全部で9つに分かれています。ほぼ勤続年数で序列は決まりますが、稀に追い抜きもあるみたいです。

呼出の仕事

 

呼び上げ

「ひが~ぁしぃ~ はく~ぅほ~ぅおぅ~」みたいなビブラートとこぶしの効いた独特の発声で土俵にあがる力士の四股名を呼び上げるのは相撲をあまり知らない人でも聞いたことがあるでしょう。手に持つ白い扇子は別に何か書いてあるわけではなく、神聖な土俵に唾が落ちないため、また力士に息をかけないための気遣いなのだそうです。本場所の奇数日は東方力士から、偶数日は西片力士からと呼び上げ方も決まりっています。また、三役以上の取組では四股名を二回(二声と言います)呼び上げます。呼び上げ方の教科書はないので、発声の仕方や呼び上げ方は全て先輩呼出から学びます。

 

拍子木・太鼓

取組の進行に欠かせないのが拍子木。これを鳴らすのも呼出の仕事です。

マイ拍子:があるかはわかりませんが、先輩から受け継いだものを使っている呼出もいます。ちなみに相撲用の拍子木の素材は桜と決まっています。
更に、結びや開場の時の小気味よい音の相撲太鼓を敲くのも呼出。プロドラマーにも引けをとらないリズミカルなバチ裁きは、見習いの時から稽古を続けた努力の賜物なんです。櫓の上で敲く櫓太鼓は「一番太鼓」「跳ね太鼓」の2種類、後者は土俵や街を練り歩きながら敲く触れ太鼓は「寄せ太鼓」とそれぞれリズムが違います。

一番太鼓:場所中朝の8時から30分間鳴り響く太鼓。昔は早朝から打たれ、興行の始まりを知らせていましたが、騒音問題などもあり今は時間も遅く短縮されています。関取衆が会場入りする際には二番太鼓もたたかれていましたが、こちらは今ではイベントなどでしか聞くことが出来ません。

はね太鼓:結びが終わった後、打ち出し(最後の合図)として打つ太鼓。「明日もまた来てね」という意味で打たれるので、千秋楽には打たれません。

寄せ太鼓:元は親方衆を呼び寄せるために叩いていた太鼓。別名「清め太鼓」ともいい、場所前に土俵を清める意味を持ちます。

 

土俵築(どひょうつき)

国技館の土俵はずっとそこにあるわけではありません。本場所が始まる前に、呼出が総出で作っているのです。国技館に限らず、地方場所でも、巡業でも、稽古場の土俵でさえも、呼出が中心となって土俵を造ります。土俵を造る作業を「土俵築」と言い、やり方が決まっています。色んな道具を使いながら何日かに分けてぜーんぶ手作業で作ります。

 

懸賞旗

取組に懸った懸賞の懸賞旗を持って力士の仕切り中に土俵上を回るのも呼出の仕事。最近は呼出の装束にもスポンサー名が入っていたりします。

 

土俵周りの雑用

「仕切りの際に土俵をほうきで掃き清める(同時に仕切り線や蛇の目もきれいにする)」「力水・力紙・清めの塩の補充」「控え力士の座布団を運ぶ」「力士にタオルを渡す」「制限時間を知らせる」などなど考えつく土俵周りの雑用は全部呼出がやります。取組で力士が出血すれば止血用のタオルを渡し、ケガで立てない力士には花道まで肩を貸したりもしています。

 

呼出一覧(2020年7月場所現在十両呼出以上)

三役呼出…次郎(春日野部屋)、克之(芝田山部屋)、志朗(大嶽部屋)、重夫(九重部屋)

幕内呼出…吾郎(大嶽部屋)、幸吉(友綱部屋)、旭(友綱部屋)、隆二(宮城野部屋)、琴三(佐渡ヶ嶽部屋)

琴吉(佐渡ヶ嶽部屋)、大吉(東関部屋)、照喜(伊勢ヶ濱部屋)、幸司(浅香山部屋)、利樹之丞(高砂部屋)

十両呼出…光昭(田子ノ浦部屋)、邦夫(高砂部屋)、松男(二所ノ関部屋)、弘行(峰崎部屋)、禄郎(尾車部屋)

正男(峰崎部屋)、悟(二所ノ関部屋)、太助(山響部屋)、重太郎(九重部屋)、富士夫(伊勢ヶ濱部屋)

啓輔(芝田山部屋)、陽平(出羽海部屋)

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